読書: 『現代ロシアの軍事戦略』

現代ロシアの軍事戦略』最近よくテレビで見る小泉悠氏の新書。

この本の話のベースにあるのは、ロシアの軍隊は実は強くないという事実。その「弱い」ロシアがいかにその軍事戦略を組み立てているかを読み解くのがこの本の主題。

もちろんロシアは絶対的に見れば今でも軍事大国であるが、ここでいう「弱い」というのは対NATOという相対的な軍事力で、特に通常兵器(非核兵器)においてはNATOに大きく差をつけられている。軍事力がその国の経済力と科学技術力に支えられていることを考えると、GDPが世界の11位、全世界の2%以下のGDPしかないロシアの軍事力がもはや強大ではないというのは当然なのかもしれない。

その事実を前提とすると、ロシアがいわゆるハイブリッド戦争を行う必然性もわかるし、核の使用を国家元首がちらつかせる理由も理解できる。特に核使用の戦略については通常戦力の拮抗の影響が大きく、本書によると、1983年にはソ連は核の先制不使用を宣言すらしているらしい。それは当時のワルシャワ条約機構はNATOより通常戦力で優位に立っていたからで、逆にNATO側が通常兵器での戦闘で劣勢になったときに核使用をする戦略を立てていたらしい。この構図が今では逆になっているわけだ。

30年前に世界は冷戦の終結を祝ったわけだけれど、冷戦がロシアという貧しい核大国を残して終わってしまったことに今の不幸な現実があるのかもしれない。。

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