読書: 『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』

予測コンテストという、様々なトピックで将来を予想しその正確さを競うコンテストがある。例えば、次のアメリカ大統領選挙の勝者は誰か、Brexitの国民投票結果は、ワールドカップサッカーの優勝国、などなど。このようなコンテストで常に高いパフォーマンスを出すスーパーフォーキャスターと呼ばれる人たちがいて、彼らの特徴の一つは、普通の参加者に比べてより頻繁に自分の意見を変えることらしい。平均的参加者は一つの課題で平均2回予測を改めるのに対して、スーパーフォーキャスターと呼ばれる人々は少なくとも4回予測を変更するという。

本書はタイトルにある通り、考え直すことの持つ力がメインテーマだ。言われてみればこれは当たり前に思えるかもしれない。一つの意見に固執するよりも、様々な意見に耳を傾けてベストな考えを選ぶ方が良いに決まっている。ただ、実際にそれを行うことが簡単ではないことは誰もが知っていることだと思う。本書は初めに、個人として今持っている考えを更新していけるようになるための考え方について議論している。そして次に、それをどうやって組織に適用していくかに議論が移る。具体的なエピソードが豊富で議論も面白いので、詳しい内容は是非実際に本を読んでほしい。

個人的に、本書を読んでいて面白かったのは、組織マネージメントのベストプラクティスというものがなぜ有効なのかを、このrethinkという枠組みで捉え直せたことだった。例えばダイバーシティが重要なのは、多様な背景を持つ人がメンバーにいることで今までになかった考えが提案される可能性が増えるからであり、また、ダイバーシティだけでは不十分でインクルージョン(心理的安全性と言っても良い)が重要なのは、個人が考えている多様な意見を議論の場に出せるような環境が必要だから、ということになる。ちなみにここは、心理的安全性でよく誤解されがちな点で、心理的安全性はハイパフォーマンスな組織を作るための方法論で、みんなが楽しく仕事がチームを作るノウハウではない (詳しくは『恐れのない組織』などを)。更に言えば、ダイバーシティもインクルージョンも組織として常に意見をアップデートしていくようになるための前提条件であって、それだけでは不十分ということも明らかだと思う。