今の若者はオタクに憧れるという。〇〇オタという言葉がメディアでポジティブに使われているから、昭和の時代のネガティブなイメージがないのは感じていたけれど、「憧れる」というレベルにあるのは知らなかった。
著者によると、その原因は「個性的でなければならない」という彼らが受けてきた教育、世間からの圧だという。SMAPの『世界に一つだけの花』の歌詞「ナンバーワンよりオンリーワン」に象徴される、個性を大事にという価値観は、友達とのコミュニケーションから就職活動での履歴書に至るまであらゆるところに影響を与え、何かハマっているものがないといけないというプレッシャーになっているという。Z世代の親が大学生だった80年代、90年代の、主流の流行りに乗っかっていればいいという(安直な)時代とは大きく違う。
状況を更に悪くしているのは、インターネットとソーシャルメディアで、そこにはちょっと詳しいだけの自分とは比べ物にならないエキスパートが沢山存在する。そこまでの情熱も時間もお金もない自分はどうすればいいのか。そういうプレッシャーにさらされた彼らにとって、オタクに憧れるというのはある意味自然な感覚なのかもしれない。ちなみに彼らが憧れるのは博識を披露する研究系のオタクではなく、情熱を捧げられるものがあって「推し活動」をしているタイプのオタクだ。
ちなみに「推し」という言葉が流行る理由がここにある。「推し」は自分が一方的に好きであることの表明で、「オタク」と名乗った時の期待値の高さ、「にわか」批判を受けるリスクを回避することができるという。”論破”したいおじさんたちがウヨウヨいるTwitterは「もう私たちのメディアではない」らしい。