読書: 『2020年 マンション大崩壊』

こんな街に「家」を買ってはいけない』という本がなかなか面白かったので、同じ著者のマンションについての本を読んでみました。ちなみに、タイトルにある「2020年」というのは多分本をcatchyにするためのもので、この本のメインテーマは特に2020年問題というわけではないです。あとこの本もKindleの試し読みで導入部分がそれなりに長く読めます。

本の中で最もページを割いて説明されるのが老朽化したマンションの問題。建築基準法とか排給水管が埋め込まれて交換不能になっている物件とかのハード面の問題もあるけれど、より大きな問題は住人の高齢化。これは前著と共通のテーマであるけれど、戸建てと比べてマンションというより関係性の深い共同体で高齢化はより深刻な問題となりうる。例えば、必要な大規模修繕が出費を抑えたい年金生活者の反対で実施できなかったり、様々な理由で管理費が滞納されたり(築30年以上のマンションの23.5%には管理費を1年以上滞納している住人がいる)、痴呆症の独居老人の問題、相続後放置される空き部屋問題、などなど。

自分はそんな古いマンションを買うつもりはないから関係ない、というのはこの議論のポイントではない。たとえ今新築のマンションを買っても30年後にはそのマンションは「古いマンション」となるのだから。30年後、まわりには最新設備の新築マンションが建設される中、自分は築30年のマンションに住み続けるのか。室内の設備はリフォームをすれば最新のものに交換できるけれども、共有部分の更新は住民の合意がとれないかもしれない。つまり、資産を共同所有していることにより、他人の持つリスクを自分も背負い込むことになっているというのがマンション所有の問題だと著者は指摘する。

もちろん全てのマンションに問題があるわけではない。例えば広尾ガーデンヒルズは約30年前に分譲された大規模マンションで、分譲時の坪単価は250万円から420万円。それが現在(執筆時なので2015年ごろ)は400万円から600万円となっているらしい。資産価値が落ちていないと同時に、きちんと管理され空き部屋問題などとも無縁だ。このような物件を買うことができれば、30年後も問題は少なく必要ならば売却することも可能だろう。ちなみに、本書すすめる安全な物件は、ひとつは青山、麻布、広尾などのブランドエリア、もう一つは駅前の物件。こういう物件を買って30年後の価値が保たれていることを期待するというはひとつの戦略かもしれない。

読後の感想: マンションを買うとしたら25〜30年後にそのマンションをどうするかという具体的なプランを描いてから買うべきだと思いました。そのまま築30年のマンションに住み続けるのか、売って住み替えるのか。戸建てについて同じことは言えるけど、建物を壊して更地にできる戸建てと違ってマンションは売れなくなるリスクがあるので。。

読書:『こんな街に「家」を買ってはいけない』

(今年は読んだ本のメモをひっそりとこのブログに書いていこうと思っています)

この本では、家を買ってはいけない場所としていわゆるニュータウンを主に取り上げている。ここでいうニュータウンは1970年代80年代に開発された、東京から1時間くらいかかる駅から更にバスを使う必要のあるような住宅地のこと。Kindleの試し読みでニュータウンの現状がどうなっているかを読むことができるが、基本的に老人の街となってしまい資産価値も大きく下がってしまっている(バブル時に1.5億円だった家が今では3000万円でも売れないといった感じ)。なぜそんなことになってしまったかは、端的にいうと社会が変化したから。共働きが当たり前になって1.5時間の通勤時間は若い世帯にとっては論外。それと同時に規制緩和により都心に多くのタワマンが比較的リーズナブルな価格帯で大量に供給されたので、ニュータウンの物件は見向きもされなくなった。何十年ものローンで都心から1.5時間も離れたところに一戸建てを買った判断を後知恵で批判することは簡単だけど、土地は上がり続けると信じられていた時代に今家を買わないと将来は今の値段では買えなくなってしまう、そして地価は上がるからローンを返せば資産になる、というストーリーを信じたのはそれほど不思議なことでもないと思う。

さて、この教訓を踏まえて今どこに家を買えばよいのか。どこに家を買ったら将来のニュータウンになってしまうリスクがあるのか。この本はコロナ前の2016年に書かれているので、ある意味答え合わせをしながら読むことができる。著者の主張の一つは家の価値をどう判断するかということ。家の金銭的な価値と、自分にとっての効用の価値とを明確に区別して考えるべきだとアドバイスする。今資産価値があるから我慢して住んでいたら(ニュータウンのように)25年後の世界では価値がなくなってしまったというのは大きな悲劇。資産価値を求めて物件を買おうとしているのか、今の生活にプラスになる家を買おうとしているのかを明確に意識するとよい。著者は基本的に後者を重視するように勧めているいるが、そこは個人の判断が必要なところだと思う。ちなみに、具体的な場所もいくつか書いていて、ひとつはブランド住宅街。青山、麻布、番町、など。ここは昔からの高級住宅街で今後も価値が保たれることが期待できる。もう一つは、人口流入がある地域。人口が増えればゴーストタウン化することはないから。本書では「人口増加自治体・総合ランキング」というのを参照している。また、著者はいわゆるタワマンは将来のニュータウンになるんじゃないかと危惧している。

この資産価値と効用価値の話は、美術品を買う時のアナロジーで理解できるかもしれない。今後値上がりしますよと言われて趣味じゃない絵を買っていたら人気が落ちて値下がりするよりも、資産価値を忘れて自分の好きな絵を飾っていた方が幸せじゃないかという話。(ただ、高い絵を買って人に見せびらかすことで満足をする人もいるので、そういう人にとっては高いものを買うことに効用価値があったりしてムズカシイ :))

読んだ感想としては、資産価値のことを一旦忘れて、自分はどんな生活がしたいのかと考えるのが、当たり前だけど正しい第一歩だと思った。コロナ後の世界、どこに住んでどういう生活を送るかの選択肢はこれまでと比べ物にならなほど広くなったと思うので。