読書:『こんな街に「家」を買ってはいけない』

(今年は読んだ本のメモをひっそりとこのブログに書いていこうと思っています)

この本では、家を買ってはいけない場所としていわゆるニュータウンを主に取り上げている。ここでいうニュータウンは1970年代80年代に開発された、東京から1時間くらいかかる駅から更にバスを使う必要のあるような住宅地のこと。Kindleの試し読みでニュータウンの現状がどうなっているかを読むことができるが、基本的に老人の街となってしまい資産価値も大きく下がってしまっている(バブル時に1.5億円だった家が今では3000万円でも売れないといった感じ)。なぜそんなことになってしまったかは、端的にいうと社会が変化したから。共働きが当たり前になって1.5時間の通勤時間は若い世帯にとっては論外。それと同時に規制緩和により都心に多くのタワマンが比較的リーズナブルな価格帯で大量に供給されたので、ニュータウンの物件は見向きもされなくなった。何十年ものローンで都心から1.5時間も離れたところに一戸建てを買った判断を後知恵で批判することは簡単だけど、土地は上がり続けると信じられていた時代に今家を買わないと将来は今の値段では買えなくなってしまう、そして地価は上がるからローンを返せば資産になる、というストーリーを信じたのはそれほど不思議なことでもないと思う。

さて、この教訓を踏まえて今どこに家を買えばよいのか。どこに家を買ったら将来のニュータウンになってしまうリスクがあるのか。この本はコロナ前の2016年に書かれているので、ある意味答え合わせをしながら読むことができる。著者の主張の一つは家の価値をどう判断するかということ。家の金銭的な価値と、自分にとっての効用の価値とを明確に区別して考えるべきだとアドバイスする。今資産価値があるから我慢して住んでいたら(ニュータウンのように)25年後の世界では価値がなくなってしまったというのは大きな悲劇。資産価値を求めて物件を買おうとしているのか、今の生活にプラスになる家を買おうとしているのかを明確に意識するとよい。著者は基本的に後者を重視するように勧めているいるが、そこは個人の判断が必要なところだと思う。ちなみに、具体的な場所もいくつか書いていて、ひとつはブランド住宅街。青山、麻布、番町、など。ここは昔からの高級住宅街で今後も価値が保たれることが期待できる。もう一つは、人口流入がある地域。人口が増えればゴーストタウン化することはないから。本書では「人口増加自治体・総合ランキング」というのを参照している。また、著者はいわゆるタワマンは将来のニュータウンになるんじゃないかと危惧している。

この資産価値と効用価値の話は、美術品を買う時のアナロジーで理解できるかもしれない。今後値上がりしますよと言われて趣味じゃない絵を買っていたら人気が落ちて値下がりするよりも、資産価値を忘れて自分の好きな絵を飾っていた方が幸せじゃないかという話。(ただ、高い絵を買って人に見せびらかすことで満足をする人もいるので、そういう人にとっては高いものを買うことに効用価値があったりしてムズカシイ :))

読んだ感想としては、資産価値のことを一旦忘れて、自分はどんな生活がしたいのかと考えるのが、当たり前だけど正しい第一歩だと思った。コロナ後の世界、どこに住んでどういう生活を送るかの選択肢はこれまでと比べ物にならなほど広くなったと思うので。

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