SNSからいかに自分を守るか? –『スマホ脳』

著者のAnders Hansenはスウェーデンの精神科医。スマートフォンが人間に与えている害とそれらへの対処法を様々な学術研究を参照しながら紹介している。原題はInsta-Brainで、(タイトルから分かる通り)特にSNSの悪影響を詳しく議論している。

著者は単純なテクノロジー懐疑主義者ではなく、人間の進化がスマートフォンとSNSの変化に追いついていないことから起こる弊害をなるべる科学的に示そうとしている。人間の生物としての進化の速度を考えると、人間の脳と体は我々の先祖がサバンナで生活していた時に最適化されていて、現代の生活には必ずしも最適ではないと主張する。例えば、高カロリーのものがあったらできるだけ沢山食べるという反応は、食糧が次にいつ手に入るか分からなかったサバンナ時代には正しい生存戦略だったが、現代では肥満や糖尿病の原因となっている。

現代の大人はスマートフォンに1日平均4時間を費やしている。2007年のiPhone登場以来、高々この10年の変化だ。それと共に、若者の不眠や鬱が有意に増えている。例えばスウェーデンでは、睡眠障害の診断を受けた若者(15-24歳)の数が2007年から5倍に増えている。著者はスマートフォンとSNSが原因ではないかと考えている。

スマートフォンの睡眠への影響は面白く、スマートフォンが寝室にあるだけで睡眠が妨げられるという実験結果がある。小学生高学年の被験者2000人にベッド脇のテーブルにスマートフォンを置いてもらったところ、置かなかった被験者にくらべて睡眠時間が21分短かったという結果が出ている。

著者は、SNSが人間の脳の報酬系を刺激するように非常にうまくデザインされていることを指摘する。例えば、ドーパミンはヒトに行動する動機を与える報酬系で、新しいことを学ぶと脳はドーパミンを放出する。SNSはスクロールするだけで簡単に新しいことを知る機会を与えてくれるため、脳はこれを止めることができない。これらの脳の仕組みは、人間が100人程度のコミュニティで生活をしていて、そのコミュニティから仲間外れになることが命にかかわるリスクだった時代に形作られたもので、今となっては脳のバグであるが、それをSNSによってうまくハックされているということだ。著者は、意識的にSNSを遮断しなければ、生活に害が出るレベルまで使い続けるようになってしまうと警告している。

最後に著者のアドバイスのうち自分が実践してみたいと思えたポイントをまとめておく。

  • 自分のスマートフォン利用時間を把握する(iPhoneならシステム設定のスクリーンタイムで可能)。
  • 目覚まし時計と腕時計を買う。スマートフォンを寝室に置かない。
  • 仕事以外でスマートフォン他のスクリーンを使う時間を最大2時間とする。
  • アプリの通知を停止する (少なくともSNSの通知は停止する)。
  • 寝る1時間前には、スマートフォン・タブレット・電子書籍の電源を切る。
  • スマートフォンからはSNSアプリを削除して、SNSはパソコンだけで使う。
  • 週3回合計45分の運動をする。心拍数が上がる(息が切れて汗をかく)レベルの運動が望ましい。

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