新しい世界の見方 -「Factfulness (ファクトフルネス)」

この本は、世界に関する知識の12個の三択クイズから始まる。例えば次のようなものだ。

Q1: 全世界の平均余命は?

  • A: 50年
  • B: 60年
  • C: 70年

Q2: 世界の1歳児のうち、何らかのワクチン接種を受けたことのある子供の割合は?

  • A: 20%
  • B: 50%
  • C: 80%

Q3: 現在30歳男性の就学年数は、全世界の平均で10年である。女性の平均就学年数は?

  • A: 9年
  • B: 6年
  • C: 3年

(ネタバレの答えは最後に載せました。ちなみに僕は上の問題すべて間違えました。)

著者はこのクイズを様々なグループ、学生から社会人、異なる職業、様々な国で出題してきたが、どのグループの正答率も33%より低かったという。つまり、ランダムに選ぶ(著者はこれをチンパンジーのレベルと呼んでいる)より正答率が低かったことになる。世界のリーダーが集まるダボス会議の出席者ですら、チンパンジー以下の正答率だったらしい。

正答率がランダムより低いのは、我々が無知なのではなくて、間違ったことを憶えているからだと著者は主張する。そして、なぜそのようなことが起こるのかを10個の理由を上げて説明する。興味がある人は本書を読んでもらいたいが、基本的には、我々が何十年も前の古い世界に関する知識とイメージを更新せずに持ち続けていることが原因だという。マイケルジャクソンが we are the world を歌っていたころの、栄養失調でお腹が膨れた子供を黒柳徹子が抱っこしていた、あのアフリカのイメージ。世界はそれから、ゆっくりではあるけれど確実に良い方向に変わってきているのだが、我々がその事実を受け入れないままでいる。

ちなみに、本書で紹介されている世界の「事実」に関して、個人的に最も驚いたのは、人口増加に関してだった。人口増加は永遠には続かない。すでに人口増加のスピードは落ち始めている。国連の予測では、世界の人口は2100年ごろに100億人から120億人の間で一定となる。この予測は確からしく、実際、現時点で既に子供の数は世界的に増えていない。女性1人当たりの子供の数は、1965年に5人だったのが2017年現在で 2.5 人まで低下し、今後もさらなる低下が予測されている。本当に低下するのか、貧しい国では子供が沢山いるじゃないか、と思うかもしれないが、家族あたりの子供の数を調べると、確かに下位10%の貧しい家族の平均の子供の数は5人なのだが、上位90%の家族の平均の子供の数は2人なのだ。この上位90%には、インドや南米、中東の国々も入っている。これは我々の多くが想像するインドとはかなり異なるのではないだろうか。

とても面白い本なので、日本語訳がでるとよいなと思う。

上のクイズの答えは、C – C – A です。

(追記) 2019年1月に日本語訳がでたようです!

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