仕事でヨルダン川西岸地区(West Bank)に行く機会があったので、パレスチナという場所の印象を、記憶が鮮明なうちに書きとめておきます。
West Bankは、1967年の第三次中東戦争でイスラエルが占領した地域です。West Bank全体が単純にパレスチナというわけではなくて、パレスチナ政府が支配している地域とイスラエル政府が支配している地域が混在しています。今回訪れたのは、エリアAと呼ばれる、パレスチナ政府が警察権、行政権ともに、完全に自治している地域です。
エリアAと他のエリアの境界には、チェックポイントと呼ばれる国境ゲートのようなものがあります。イスラエル国民は、エリアAに入ることが禁じられているので、イスラエルの人と話をしても、エリアA内に行ったことがある人は実はあまりいません。今回、エルサレムから我々に同行して来たイスラエル人のガードマンも、このチェックポイントの前でバスを降りて、パレスチナ人のガードマンと交代しました。また、一般に、この逆向きの通行(エリアAから、イスラエル支配領域への移動)は審査が厳しく、イスラエルで働くパレスチナ人は、労働許可書を手に、毎朝チェックポイントに行列をして入国審査を受けるそうです。時間がかかるため、朝の4時5時から行列をすると言っていました。

初めに訪れたのは、ベツレヘムという街で、聖誕教会というキリスト教の聖地がある街です。普通の観光だったら聖誕教会へ直接行くのですが、今回は、かつて街の玄関口となる片道2車線の道路があった場所からスタートしました。現在は、その道を分断するように、壁が建てられて、エリアAをイスラエル入植者の住む地域からから隔離しています。



この壁のすぐ反対側にイスラエル人入植者が住んでいるかというと、そういうわけではなくて、彼らの住むアパート(Settlementと呼ばれる)は、比較的離れた丘の上に建てられています。ちなみに、West Bankの電気と水はイスラエルから供給されていますが、断水することが多いらしく(ある人は、週に2日しか水は通じないと言っていました)、パレスチナのアパートの屋上には水を貯めるタンクが必ずあります。一方、Settlementでは断水はないようです。

ベツレヘムの街の中心の聖誕教会周辺は、エルサレムの旧市街のような綺麗な街並みが広がっています。範囲は狭いですが、お土産屋や食べ物屋があり、観光客も少なからずいます。特にキリスト教の聖地巡礼ツアーで来る観光客が多いようです。元々抱いていたパレスチナのイメージとはかなり異なる風景でした。
次に、West Bank最大の都市、ラマッラーを訪れました。ここはパレスチナ政府の実質上の首都で、人口は3万人ほどの街です。ちなみに、我々は、一度ベツレヘムのあるエリアAを出て、エリアCを通って、ラマッラーのあるエリアAに入りましたが、パレスチナ人がこのルートを通るにはチェックポイントで許可を受ける必要があり、必ずしも通れるとは限りません。
ラマッラーは至って普通な街にみえました。数ヶ月前から3Gが通じるようになったらしく、道にはスマートフォンを片手に歩く人がたくさんいました。ラマッラーの中心に来れば、パレスチナ人しか住んでいないから衝突もなくて逆に安全だと、現地に住む人も言っていました。普通の街との違いといえば、建物を上に必ずある黒い貯水タンクくらいでした。
夕方、エルサレムに戻るためにチェックポイントへと戻ってくると、また、壁と落書きが現れて、パレスチナにいることを思い出させます。エリアAから出るときは、入るときより厳しめの検査がなされて、我々のバスにも警察官が乗り込んで、全員のパスポートをチェックしました。
ちなみに、エリアAへの入域チェックが常に軽いわけでもなく、その時の治安情勢によってどうにでも変わり得るそうです。実際、我々が通過した朝は、なにもチェックがありませんでしたが、その直後から全員のパスポート検査があり、時には予告なくチェックポイントが封鎖されることもあるそうです。
